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(狭心症、心筋梗塞、無症候性心筋虚血)
動脈硬化の塊が、 心臓の血管である「冠動脈」の壁に沈着し、冠動脈が細くなったり閉塞したりすることを総称して「虚血性心疾患」と呼びます。
心臓の筋肉「心筋」への血流が低下した状態を「狭心症」、心筋への血流が完全に途絶え、心筋が壊死した状態を「心筋梗塞」と呼びます。糖尿病などの方は、症状がでないこともあり、「無症候性心筋虚血」と呼びます。
急性心筋梗塞を発症すると、約20%の方は死に至ります。また、死に至らずとも、障害を受けた心筋が機能しなくなるために心臓の機能が低下し、心不全の原因となったり、不整脈の原因となったりします。
(1)薬物治療
病気が進行した場合、カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)や冠動脈バイパス術が必要になります。
(2)カテーテル治療 (経皮的冠動脈形成術)
カテーテル(細い管)を用いて、風船やステント(金網)にて、細くなっている冠動脈や閉塞している冠動脈を拡張させ、血流を改善させる方法です。カテーテル治療は、冠動脈バイパス手術に比べて身体への負担が少ないです。心臓内科にて行っております。
(3)冠動脈バイパス術
身体の別の部位より血管を取り、細くなったり閉塞したりしている部位より先の冠動脈につなぎ、心臓への血流を改善させます。
左冠動脈主幹部病変(左冠動脈の根元の病変)・左前下行枝近位部病変(左前下行枝の根元の病変)・3枝病変(3本の冠動脈全てに病変がある場合)・高度石灰化病変(冠動脈が非常に硬い場合)・びまん性病変(冠動脈の病変が長い場合)の方や、糖尿病の方、心臓の機能が低下した方の場合、カテーテル治療よりもバイパス手術のほうが、より長持ちし、長期的に心筋梗塞になる危険性がより下がり、寿命がより長くなります。
手術は、胸の中央を切開します。また、バイパスの血管を採取する部位にも切開を加え、血管を採取します。
胸の動脈(内胸動脈)、足の静脈(大伏在静脈)、手の動脈(橈骨動脈)や胃の動脈(胃大網動脈)などを採取し、細くなっている部分や閉塞している部分より先の冠動脈につないで、心臓への血流を改善させます。
胸の動脈(内胸動脈)は、最も長持ちする血管です。足の静脈(大伏在静脈)は、他の血管と比較すると長持ちしにくいですが、たくさん採取でき、何か所もバイパスする場合に有用です。手の動脈(橈骨動脈)や胃の動脈(胃大網動脈)の長持ち度は、胸の動脈と足の静脈の中間と言われています。
人工心肺装置を使用せず、心臓を拍動させたまま手術(オフポンプ冠動脈バイパス術)を行う場合と、人工心肺装置を用いて心臓を補助しながら手術を行う場合があります。弁膜症の手術や胸部大動脈の手術が同時に必要な場合では、人工心肺装置を使用した手術を行います。
当院では、冠動脈バイパス術のみを行う場合は、90%以上において人工心肺装置を使用せずにオフポンプ冠動脈バイパス術を行っています。また長持ちするように、80~90%において2本の内胸動脈を使用しています。
静脈グラフト(大伏在静脈)は基本的にNo-touch techniqueと呼ばれる方法で採取しています。この方法では、静脈には直接触らず、大伏在静脈を周囲の脂肪組織と一塊にして採取し、ヘパリン加生食などでの拡張処理は行なっておりません。No-touch法による静脈グラフトは、静脈内皮の機能が温存され、より長持ちすると考えられております。内胸動脈と遜色ない開存率が得られるとの報告もあり、当科ではNo-touch法による大伏在静脈グラフトを積極的に使用しています。
*人工心肺装置とは
人工心肺装置とは心臓と肺の機能を持つ機械で、酸素を血液に取り込み、全身に送る機械です。弁膜症や胸部大動脈の開胸手術などで必要になります。