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「大動脈」は、体の中で一番大きな血管で、心臓から送り出された血液の通り道です。
心臓から送り出された血液は、下記のように流れます。
心臓
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大動脈基部: 心臓への血管(冠動脈)を枝分かれします
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上行大動脈
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弓部大動脈: 脳や腕に向かう血管を枝分かれします
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下行大動脈
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腹部大動脈: 胃・腸・肝臓・腎臓に向かう血管を枝分かれします
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腸骨動脈: 足・腸・臀部に向かう血管を枝分れします
胸の中の大動脈を総称して、「胸部大動脈」と言います。
大動脈が大きくなって「大動脈瘤」となると、破裂する危険性が高まります。胸部大動脈瘤が破裂すると胸の中で大量出血をきたし、多くの場合、病院にたどり着く前に死に至ります。
また、破裂後に救急車で何とか病院に運ばれても、状態が悪くなっていることが多く、緊急手術をしても救命率が低く、また、救命できても重篤な合併症が起きる可能性が高くなります。
そのため、胸部大動脈瘤がある程度大きくなった場合は、症状がなくても、破裂前に手術をする必要があります。
大動脈瘤の原因は、動脈硬化(糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙、加齢など)によることが多く、他の原因としては、解離、感染、炎症などです。
(1)(開胸による)胸部大動脈人工血管置換術
胸の中央又は左側を切開し、大動脈瘤を人工血管に取り替えます。
「上行大動脈瘤」や「弓部大動脈瘤」を人工血管に取り替える場合(「上行大動脈人工血管置換術」「弓部大動脈人工血管置換術」)、胸の中央を切開し、心臓を停止させて手術を行う必要があり、代わりに「人工心肺装置」を用いて全身に血液を送り、心臓には心筋保護液という薬剤を注入して心臓を停止させ、大動脈瘤を人工血管に取り替えます。また、各臓器(脳、心臓、腹部臓器や脊髄など)を保護するため体温を低下させて手術を行います。
大動脈基部が拡大した「大動脈弁輪拡張症」「大動脈基部瘤」の場合、ご自身の大動脈弁の変性が高度でなければ、ご自身の大動脈弁を温存し「大動脈弁温存基部置換術(自己弁温存基部置換術)」を行います。大動脈弁の変性が高度の場合は、人工弁を用いて「ベントール手術」を行います。
「下行大動脈瘤」を人工血管に取り替える場合は、左胸を切開し、人工心肺装置を用いて腹部や足へ血液を送りながら、下行大動脈瘤を人工血管に取り替えます。
心臓を動かしたまま手術を行う場合と、心臓を停止させて手術を行う場合があります。
*人工心肺装置
人工心肺装置とは、心臓と肺の機能を持つ機械で、酸素を血液に取り込み、その血液を全身に送る機械です。弁膜症や胸部大動脈の開胸手術などで、必要になります。
(2)胸部大動脈ステントグラフト内挿術
足の付け根を小さく切開し、カテーテル(細い管)を用いて、金網付き人工血管「ステントグラフト」を留置する方法です。開胸手術と比べ、身体への負担が少ないです。
下行大動脈瘤に適していることが多いです。上行大動脈瘤や弓部大動脈瘤には適していないことが多いです。
心臓内科と心臓外科の合同で手術を行っております。